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市街化調整区域の工場跡地(5.8ha)地区計画による再生
車のシート生地工場の跡地として10数年。廃墟と化した工場はカラス等の糞公害により周辺住民の悩みともなっていました。関係機関等とまちづくりに関する議論を重ね5年の歳月を要し、ようやく企業誘致が決定。工場を中心としたまちづくりが実現しました。
企業誘致に立ちはだかる市街化調整区域の壁
企業誘致に適した大和平野
奈良県の北部に位置する大和平野は、本来、企業誘致に適した地域です。
- 比較的安定した気候
- 津波の心配がないなど、災害が起こりにくい
- 平坦で広大な土地
- 開発されていないエリアが多数残されている
- 日本の中心近くに位置し、大阪にも近く、交通の便が良い
などの利点があり、5000坪~1万坪の産業用地として求める企業も多いのですが、「市街化調整区域」も多く、それが企業誘致のハードルになっています。
市街化調整区域とは
土地には大きく「市街化区域」と「市街化調整区域」があります。地方自治体が都市計画のために定めているものです。市街化区域は「住宅や商業施設を建てていこう」というエリアで、街を活性化させるために活用する地域のこと。反対に、市街化調整区域はあまり開発をせず、都市化を抑制しようというエリアのことです。大和平野には農地を守るために、市街化調整区域が多くあります。
本件の土地も市街化調整区域だった
今回サンコウ設計にご相談いただいた土地は、十年以上前、車のシートカバーを製造する工場でした。
- 大和郡山市昭和工業団地内
- 5.8ヘクタールの広大な土地
- 国道25号線に面し、西名阪自動車道 大和まほろばスマートインターチェンジから2kmに位置
など、周辺環境や利便性から見て多くの企業にとって旨味のありそうな土地ですが、工場になる以前から市街化調整区域だったのです。
それによるデメリット
- 企業:建設に制限があり、許認可に多大な時間を要する。そのため買いたくても買えない。
- 土地のオーナー:売り先が限られ、例え売れたとしても安価となる。
- 市民:折角の利便性のいい土地が地域住民のために活用できない。企業誘致による雇用などの恩恵が受けられない。放置された土地では衛生上、治安上の問題が起きる。
- 大和郡山市:税収が大幅に少なくなる。
大和郡山市昭和工業団地の市街化調整区域の工場跡地の再生を図る
ご相談いただいた経緯
この土地のオーナーは、従前の工場倒産後、競売にかけられた土地を落札されました。権利関係を整理され、いざ土地を売ろうとしたとき、市街化調整区域だったために非常に売りづらいことが分かったのです。ショッピングセンターや飲食店は不可、工場や倉庫を新たに建てるのにも開発許可が要るなど様々な規制があり、困り果ててサンコウ設計に相談をいただきました。
地域のために引き受ける
土地活用の長年のキャリアを持ち、地元の信用が厚く、法令を熟知し、大手企業との橋渡しができるリーダーでなければ計画は立てられません。そして何よりも「地域活性化のために力を尽くしたい」という強い気持ちと俯瞰した視野が必要になります。工場閉鎖より十数年が経ち、すでに廃墟と化しており、工場建物の内部はカラスや野鳩などのすみかとなっていました。周辺住民が糞公害や治安の悪化に悩まされていたこともあり、サンコウ設計がやるしかないとお引き受けすることにしました。
具体策
大きな土地の売買案件があると、様々な人から話を持ち掛けられることは珍しくありません。悪く言えば、皆おいしい話に群がってくるのです。実際オーナーは、色々な話に振り回されて、何を信じて良いか分からない状態になっていらっしゃいました。そこで、サンコウ設計は筋が通らない話を切り分け、関係者に会うなどして情報を整理しました。そしてオーナーと一緒に役所へ出向き、法令に照らした計画を持っていき「全責任をサンコウ設計が持つ」と断言して、スピード感を持って推し進めました。とはいえ、関係機関との調整に5年の歳月を要して、企業誘致など土地活用が決定。ようやく工場を中心としたまちづくりが実現しました。